建物明け渡し 具体的事例に基づいて建物明渡手続きの流れ
をわかりやすく解説します。
A
さんの未払い家賃(賃料)請求
家賃滞納の借家人(賃借人)に支払約束の履行
を守らせるための良い方法とは
以下は建物明渡の流れを説明するために司法書士の経験を交えな
がら、わかりやすく解説しながらストーリー構成にしています。
必ずしも全ての事例に合致するものではありません。
多くの明渡事例の中の一つのケースとしてご理解ください。
相談
AさんはZさんが家賃を滞納していて連絡も付かないので建物明渡の依
頼にみえましたが、(詳しくは「
Aさんの建物明け渡し請求」をご覧ください)
Aさん所有の同じアパートに住むVさんも家賃の滞納があるので、Vさん
の件でも相談したいということになりました。
「家賃未納のZさんの件で建物明渡までもっていくのが大変だとわかりま
した。時間も費用もかかるし・・・こんな苦労はもうしたくない。
せんせい、なんとかこんな苦労せずに簡易迅速な手続きはないもんか
ねー?」
「そうですね。伺ったところでは、幸いVさんは、家賃の滞納が少なく、賃
料未納も今回初めてです。
私がVさんに話をしてみましょう」
「たのむよ、せんせい」
Aさんの要望
その後、「せんせい、どうだった?」
「Vさんと連絡がつきました。どうも勤務先を解雇されて家賃の支払いが
できなかったそうです。
そして来月からは再就職が決まったので、来月末から必ず支払うという
ことです。」
「約束はいいのだが、こちらとしては、その約束を守らせたいし、もしも約
束が守られなければ、(借家を)出て行ってもらいたい。
Zさんのように大変な苦労しないように簡易にできるようにしてもらいたい
んだ。そういう方法ってないですか?」
「大家さん側としては当然の要望ですね。
賃料の未納があるだけでも損失なのに、それに加えて、建物明渡の強制
執行までもって行くのに費用や時間もかかる。大家さんにとってはまさに
ふんだりけったりですものね。」
公正証書
「せんせい、わしは賃貸事業(アパート経営)以外でも事業をやっていて、
取引先が売掛金の支払いをしない場合に弁護士に頼んだところ、訴訟
手続きになると時間と費用がかかって大変だから良い方法を教えてくれ
たんだよ。
公正証書を作ってもらったんだ。
それがあれば裁判しなくても相手が約束を守らなければいきなり強制執
行ができるんだよね。」
「おっしゃるとおり、執行認諾文言付の公正証書を公証人に作成してもら
えば、相手方の約束の不履行があれば、訴訟手続きを経ずにその公正
証書でもって、強制執行ができます。」
「じゃーこんどもそれ(公正証書)を作るんだね」
「いえ、公正証書は作りません。」
「え、なぜ?」
公正証書の効力
「公正証書は、公証人が、当事者の意見を聞きながら作成するもので、
効力が限定され、金銭の一定の額の支払いを目的とする請求(金銭そ
の他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」)
についてしか強制執行は出来ません。
今回の強制執行の目的はVさんが約束(滞納賃料の支払)を守らなけ
れば、Vさんの資産(預金口座や不動産等)に差押をしてその資産から
(資産によっては換価したうえで)直接弁済を受けるの(が本来の目的)
ではなくて、Vさんに借家(賃貸物件)を明け渡してもらうのが目的です。
明け渡してもらうという行為は相手方に強制的にある行為をさせるのが
目的で金銭の支払いを目的とする行為ではありません。
だから、金銭の支払いの強制執行(しかできない)が可能な公正証書
では、建物明渡の強制執行をさせることはできないのです。」
「そりゃーこまったなー、それじゃー裁判手続きからはじめないとだめか
ー」
即決和解
「いえいえ、Aさんが希望する、訴訟手続きを経ずに簡易迅速に強制執
行手続きまでもっていくことができる手続きがあります。
安心してください。」
「それはなんですか?」
「即決和解(訴訟提起前の和解)の申立手続きというのがあります。
即決和解というのは民事上の紛争について当事者間で合意できる見通
しがついた場合、簡易裁判所に対して和解の申し立てを行い、裁判所に
双方が出廷し合意内容を和解調書に記載する内容の和解手続をするこ
とをいいます。」
詳しくは「
即決和解」をごらんください
「Vさんと話したところ、即決和解の手続きについて合意してくれました。
後は簡易裁判所に申立をしてVさんと共に裁判所にいけば、即決和解
の手続きができます。」
「そうすると、Vさんが即決和解に応じてくれなければ手続きはできない
のかい?」
「そうです。公正証書と同じで相手方と公証人役場へ行かなければ、公
正証書は作成できないように、相手の協力が無ければ即決和解はでき
ません。」
「そうすると家賃滞納で連絡をとれない相手や即決和解に応じない相手
は、いちから訴訟手続きを経てやらないといけないのだね?」
「そのとおりです。強制執行という相手方の意思に反して国家権力が強
制的に執行をして、場合によっては相手方に取り返しの付かない損害を
与えることにもなるので、その手続きには慎重で段階を経なければなりま
せん。
ですから、相手が関与しないところで、簡易に強制執行が出来るお墨付
きを簡単に与えることはできないのです」
「よくわかったよ。ところで、家賃の滞納分の強制執行もその即決和解で
できるのかい?」
「和解条項に滞納家賃の支払義務も記載するように申し立てれば、滞納
賃料についての金銭の支払いの強制執行もできます。」
「そりゃ、よかった。これでひとまず安心だ。ところで、わしのアパートの借
家人で行方不明の者がいるのだが、相談にのってくれるかね?」
「もちろん、それでは、『
行方不明の賃借人の建物明渡』をご覧ください」
家賃の未納(滞納・延滞)が続いている。
家賃の支払いが無いまま、立ち退いてくれない。
そのようなことでお困りの場合、法的手続きを含めた「建物明け渡し
請求」手続き(任意交渉・建物明け渡し訴訟提起・建物明渡の強制
執行の各種手続き)により解決できることがほとんどです。
金融機関及び不動産会社に過去在籍し、賃貸建物の賃料請求・建
物明け渡し請求手続き(任意交渉から建物明け渡し訴訟提起、建物
明け渡し強制執行の法的手続きに至るまで各種手続き)の
現場での
実務経験がある司法書士が対応いたします。
詳しくは「
司法書士の紹介
」をご覧ください
安心しておまかせください。